橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

ザルツブルク音楽祭 モーツァルト・マチネ

classingkenji+books2010-09-22

28日の昼は、モーツァルテウムで行われたモーツァルテウム管弦楽団のマチネへ。指揮は、トン・コープマン。モーツァルテウムのホールには初めて来たが、クラシックな内装がたいへん美しい。
プログラムは、交響曲1番、JCバッハを編曲した最初のピアノ協奏曲、クオドリベットなどモーツァルト最初期の曲、「おもちゃの交響曲」を含むレオポルドの曲、そして最後はリンツ交響曲。レオポルドには変わったパーカッションやツィンバロン、バグパイプ様の楽器などが出てくるが、オーケストラそのものはトランペットやティンパニを例外として近代楽器のようで、これをピリオド風に響かせるという、現代のモーツァルト演奏として一つの典型的なスタイルである。モーツァルテウム管弦楽団は、録音で聴いて可もなし不可もなしの普通のオーケストラのように思っていたが、実際に聴くとなかなか機動性があり、響きも美しい、素晴らしいオーケストラだった。
初期のモーツァルトは、やはりモーツァルト以前である。交響曲の第1楽章など、動機はあっても旋律がなく、ようやく3楽章で旋律らしきものが現れる。しかし協奏曲では対位法や和声など技術が進歩し、クオドリベットではようやくモーツァルトらしさが姿を現してくる。選曲と演奏順が、なかなか考えられている。レオポルドの二曲は、いずれも珍しい楽器を使ったもの。音楽史的にみて、このようなスタイルは特殊なものだったのか、それとも失われてしまって、たまたまレオポルドの曲だけが生き残ったものか。ともかく聞いていておもしろい。こうしたスタイルの曲が他にもあるなら、誰か掘り起こして録音してくれないものか。
リンツは、もともとピリオドスタイルで演奏するのに適した曲だろう。速いテンポ、ティンパニを活用したリズムの強調、ノンビブラートの力強い弦楽器など、素晴らしい演奏だった。コープマンは、相変わらず躍動するような指揮ぶりで、快調そのもの。これまた、素晴らしい演奏会だった。