橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

ザルツブルク音楽祭 ベルリン・フィルハーモニー コンサート

classingkenji+books2010-09-26

ザルツブルクの最後の夜は、ベルリン・フィルのコンサートへ。指揮は、サイモン・ラトル。前半は、ワーグナーの「パルジファル前奏曲R.シュトラウスの「4つの最後の歌」、後半はウェーベルン管弦楽のための6つの小品、シェーンベルクの5つの管弦楽曲、ベルクの3つの管弦楽曲という、渋いプログラムである。R.シュトラウスのソプラノは、カリタ・マッティラ。
これまでウィーン・フィル、コンセルトヘボウと聴いてきたので、ベルリン・フィルの弦楽器はやや細身で金属質に聞こえる。管楽器も、細身の鋭い音色だ。前半もよかったのだけど、何といってもこのコンサートは、後半が聞き物だった。
演奏の前にラトルが、マイクを持って話し始める。ドイツ語なのでほとんど分からなかったが、3曲を続けて演奏するので、途中で拍手はしないでくれ、マーラー交響曲だと思って聴いてくれ、というような意味だったようだ。聴衆から笑いが起こったところをみると、ジョークを交えて話していたのだろう。ちなみに、最初のウェーベルンが終わったところで、「私はここで曲が終わりだと知ってるんだぞ」とアピールするように拍手したのが一人いた。たぶん日本人だろう。きっとまわりから冷たい目で見られたに違いない。
演奏は、ほぼ理想的なものだった。圧倒的なダイナミックレンジで、複雑な管弦楽法の3曲を、緻密・明晰に演じきった。打楽器が素晴らしく、ラストのハンマーは聴衆の度肝を抜いた。ホルンとチューバにややミスが目立ったのを除けば、他の楽器もほぼ完璧。
曲の性質が違うので正確な比較にはならないが、俗にいう「世界三大オーケストラ」を聞き比べた印象では、弦楽器はウィーン・フィル、管楽器はコンセルトヘボウ、打楽器と全体の音響のまとまりではベルリン・フィル、といったところか。まさに優劣を付けることのできない「三大オーケストラ」といっていいだろう。
というわけで、一〇日間のザルツブルクの旅は終わり。余韻に浸っていたせいか、帰りの飛行機は意外に苦にならなかった。