橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

『銀座と戦争』

平和博物館を創る会という団体が編集した写真集。一九三七年から一九四九年に撮影された銀座および周辺の写真が、三六四枚収録されている。冒頭に出てくるのは、南京制圧の戦勝記念パレード。市民は、屈託のない喜びようである。戦時色が強まり、服部時計店松屋の前を戦車が行進するようになったかと思えば、日米開戦。開戦の一年後には、大規模な防空演習が始まる。そして有楽町の人通りもめっきり少なくなっていく。爆笑ものだったのは、日比谷公園に展示された、撃墜されたB29の残骸と、大破した日本の戦闘機・飛燕。飛燕はプロペラをB29の尾翼に接触させて破壊し、墜落させたとのこと。プロペラは飴細工のように曲がっている。
一九四五年になると、大規模な空襲が相次ぐ。霞ヶ関と九段下から銀座空襲の瞬間をとらえた写真は衝撃的だ。有楽町駅も御木本真珠店も大破。山野楽器や、現在三愛のある場所にあったキリンビアホールが炎上している写真もある。
そして、占領。クリスマスには、GHQ本部のあった第一生命館が安っぽく装飾されているのが笑える。木村伊兵衛の撮った新橋ヤミ市の写真が五枚収められていたのは収獲だ。銀座の露店も、鮮明にとらえられている。写真集の最後には、ほぼ同じ一三の地点で四四年、七五年、八五年に撮られた写真が並べられている。銀座の変化が一目でわかり、興味は尽きない。
一九八六年に初版が、一九九三年に増補版が出ている。初版は一〇〇〇〇円、増補版は一八〇〇〇円と高価。しかし初版は、「日本の古本屋」などでかなり安価で売られている。追加された内容はわずかなので、こちらを買うのがいいと思う。

銀座と戦争

銀座と戦争

銀座と戦争

銀座と戦争