ザルツブルク音楽祭2012 クリーブランド管弦楽団2
八月二九日は、クリーブランド管弦楽団のコンサート二日目。最初は「わが祖国」の終わりの二曲。昨晩は聴衆を落胆させたメストだが、今日の演奏ではテンポ設定も妥当で、音楽の流れにも問題はなく、金管も適度に鳴っていて、まずまずの演奏だった。
二曲目はクリスティアン・ツィマーマンのソロでルトスワフスキのピアノ協奏曲が演奏されるはずだったが、ツィマーマンは病気で演奏できなくなたとのことで、かわりに別の曲が演奏された。作曲はマティアス・ピンシャーという未知の作曲家で、二人のトランペットと管弦楽の協奏曲という珍しい演奏形態。トランペットは複数の弱音器と特殊奏法を駆使し、フリージャズのような雰囲気。ソリストはクリーブランドの主席とセカンドだが、完璧なテクニックと素晴らしい音色 金管のレベルの高さを見せつけた。突然のプログラム変更にもかかわらず完璧な演奏だったのは、つい数日前にルツェルン音楽祭で初演したばかりだからだったようだ。
そして最後は、ショスタコーヴィチの交響曲第六番。ともかく木管、とくにピッコロが素晴らしい。フルートのように柔らかく安定した音色、完璧なテクニック。他の木管も、クラリネットを除けば非常にレベルが高い。弦はやや細身で、もう少し力強さがほしいところだが、機動性は文句ない。最終楽章の最後は、テンポを上げて疾走するが、一糸乱れぬアンサンブルはそのまま。贅沢をいえば、ショスタコーヴィチらしい諧謔味がもう少し欲しいところだが、ほぼ理想的な演奏で、スメタナでの不名誉を完全に挽回したといっていい。