橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

ザルツブルク音楽祭2012 コンセルトヘボウ管弦楽団

classingkenji+books2012-09-30

八月三一日は、コンセルトヘボウ管弦楽団。今回の音楽祭では、もっとも期待していたコンサートである。いちばん値段の高いカテゴリーの席にしたところ、前から四列目のほぼ中央というポジションだった。指揮はもちろん、マリス・ヤンソンス
一曲目は、バルトークのバイオリン協奏曲第二番で、ソロはレオニダス・カヴァコスシベリウスのCDで聴いていたが、すごいバイオリニストに成長したものである。完璧なテクニックで、美しい音色。歌うというよりは、明瞭な言語で語りかけるスタイルといっていいだろう。ここではオーケストラは、あくまで伴奏に徹していたようだ。
次は、マーラー交響曲第一番。冒頭の弦の弱音から、早くも言いしれぬ緊張感が漂い、名演を期待させる。主題が始まると、期待が徐々に現実のものとなり、さらに演奏は期待を遥かに上回っていく。何よりも弦が素晴らしい。弦楽器の各パート十数人の楽団員が、一糸乱れずにまるでソロ奏者のように雄弁なポルタメント、ルバートを展開していく。弱音の時も強奏の時も、それは変わらない。しかも、テンポの変化と強弱の変化、これによる表情の変化のすべてが自然で、必然性を感じさせる。これはすごいことである。管楽器もすべてが万全。細かいミスはあったが問題にはならない。印象に残ったのは第三楽章冒頭のコントラバスのソロで、これまで聴いたことがないくらい完璧だった。そして最終楽章は、現代オーケストラ音楽の頂点を示す超名演。
終わったあとはブラボーの嵐で、聴衆は総立ち。このオーケストラが、ウィーン、ベルリンを凌駕する世界最高のオーケストラであることを証明したコンサートだった。(2012.8.31)