橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

ザルツブルク音楽祭2016 ノリントン/カメラータ・ザルツブルク

classingkenji+books2016-09-25

8月17日は、モーツァルテウムの大ホールで、カメラータ・ザルツブルクのコンサートを聴く。指揮は、名誉指揮者のロジャー・ノリントンで、曲目はオール・ベートーベンで、「プロメテウスの創造物」と「エロイカ」。
古楽指揮者第1世代というものがあったとすると、アーノンクールレオンハルト、ホグウッド、ブリュッヘンなどが他界した現在、ノリントンは最後の生き残りといってもいいだろう。足取りは少々おぼつかず、ずっと座ったままの指揮だが、動きは軽快で、演奏は生気にあふれていた。
「プロメテウスの創造物」を実演で聞くのは初めてだ。演奏はノリントン自身が書いたナレーション付きで、ナレーターはドイツ語訳も手がけたハンネス・アイヒマン。もともとのギリシャ神話とはだいぶ違っていている。プロメテウスが自分で作った土人形に、神から盗んできた火を使って命を吹き込んだものの、知性も感情もないただの生き物。そこでアポロやパッカスなど、仲間の神々たちの力を借りて、人形に知性と感情、そして音楽の楽しみを教え、最後はみんなで踊って大団円、というお話。速めのテンポで、楽しい演奏だった。
エロイカ」も、全体にテンポが速く、軽快に進んでいく。最終楽章は、「プロメテウスの創造物」の最終楽章とテーマが同じだから、これでプログラムが完成し、大いに盛り上がる。終演後は万雷の拍手で、ノリントンザルツブルクの聴衆の敬愛を集めていることがよく分かった。モーツァルテウムの響きの美しさも、相変わらずである。(2016.8.17)