ザルツブルク音楽祭2018 ロンドン交響楽団コンサート
音楽祭4日目は、サイモン・ラトルの指揮するロンドン交響楽団のコンサートへ。曲目は、バーンスタインの交響曲第2番「不安の時代」を前半におき、後半はドヴォルザークのスラブ舞曲作品72と、ヤナーチェクのシンフォニエッタ。
バーンスタインのソリストは、ツィンマーマン。ツィンマーマンは6年前の音楽祭で、クリーブランド管弦楽団をバックにルトスワフスキの協奏曲を弾くはずだったのに、体調不良とのことで聞き逃した。今回、ようやく同じく現代ものを聴くことができたことになる。バーンスタインのこの曲、遠い昔に一度聴いたことがあるだけで、ほとんど印象が残っていなかったのだが、ラトルのメリハリある指揮とツィンマーマンの華麗なソロで、十分楽しむことができた。同じコンビでCDが出ているはず。買ってみようという気にもなった。
後半のドヴォルザーク、有名な1曲目は以前、ラトルがベルリン・フィルを振ったコンサートのアンコールで聴いたことがあるが、じつに生気あふれる演奏。コスモポリタンなスタイルには賛否があろうが、エンターテインメントとしては満点だろう。7曲目の最後を大いに盛り上げたところでいったん指揮棒を止め、ねらい通りに聴衆が拍手を始めたところで、「まだ終わりじゃないよ、つづきを聞いてね」(聞き取れないので想像)といったことをしゃべって笑いを誘ってから、終曲へ。ラトルらしい茶目っ気である。さて、ラストのシンフォニエッタ。ドヴォルザークの2曲のヴィヴァーチェにも共通のことだったが、金管はがなり立てる手前、弦は金切り声を上げるようになる寸前まで音量を上げ、音響のバランスがいくぶん崩れるのもおかまいなしに盛り上げる。以前のベルリン・フィルの演奏でもその傾向はあったが、それをさらに強めたこの演奏は、功成り遂げたラトルだからできることだろう。
前半のバーンスタインは、作曲者のヒューマニズムが感動を呼び起こしたが、後半の2曲は感動よりは興奮を優先した演奏といっていい。ベルリン・フィルを去ったあとのラトルは、こんなふうに自由な演奏活動をしていくことになるのだろう。(2018.8.20)