橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

総選挙終わる。

衆議院選挙で、政権交代が決まりました。これは今日の毎日新聞朝刊の記事です。ネットでも公開されています。 http://mainichi.jp/select/seiji/09shuinsen/news/20090831ddm012010099000c.html

木下昌明『スクリーンの日本人』

映画評論の世界には、もともと反体制的感性の持ち主が少なくないけれど、これほどはっきりと反体制カラーを前面に出し、しかも何冊もの著書のある人は、今では珍しい。「日本映画の社会学」という副題のつく本書は、さまざまなジャンルの多くの映画を扱っては…

橋本健二『新しい階級社会新しい階級闘争』

私の2年前の著書だが、ネット上に素晴らしいレビューが出た。大阪産業労働資料館エル・ライブラリーのサイトである。山口さん、ありがとうございます。 タイトルには「階級社会」「階級闘争」という言葉がならんでいますが、現代日本の状況を、伝統的な階級…

秋本治「東京深川三代目」

先日読んだ『昭和マンガ家伝説』で、平岡正明が激賞していたのがこれ。近所の古本屋でたまたま売っていたので、買ってみた。 たしかにこれは、いい作品である。深川にある立花工務店の孫娘・静は、子どものころから祖父の仕事現場に入り浸り、将来は大工にな…

東京新聞編集局「東京歌物語」

これは、連載時から注目していた好企画。ふんだんにカラー写真が入った単行本になったのがうれしい。 たとえば、坂本九の「見上げてごらん空の星を」取り上げて、これを定時制高校で学ぶ・学んだ若者たちへの応援歌と位置づける。そして井沢八郎の「あヽ上野…

「幻の光」(是枝裕和監督・1995年)

木下昌明という映画評論家の本を、立て続けに四冊読んだ。これについては、日を改めて書くことにするが、そこで興味をひかれて見たのが、この映画である。 ストーリーは、どうということはない。主人公のゆみ子(江角マキコ)は、夫が突然の自殺を遂げた5年後…

平岡正明『昭和マンガ家伝説』

平岡正明が亡くなった。私がこの名前を知ったのは、一九七二年の『あらゆる犯罪は革命的である』によってだが、犯罪と反体制を無関係な、それどころか対極のものと考える潔癖左翼の発想から解放されるのに、この本のタイトルは(ほとんどタイトルと目次だけし…

青木正児『酒の肴・抱樽酒話』

原著は1948年と1950年で、これが一冊にまとめられたのが1962年、改版を経て文庫化されたのが、本書である。 文学や歴史を専門とする人には、ときどき驚くほど博識な人を見かけるが、この著者などはその最たるものだろう。中国古典文学を専門としていたようだ…

伊藤元重『リーディングス 格差を考える』

伊藤元重が編集したリーディングスというから、かなり専門的な論文を集めたものかと思ったら、大部分が『エコノミスト』『日本経済新聞』『論座』など、一般向けのメディアに書かれたもの。入門書ではないから、それぞれの著者の主張が前面には出るものの、…

岩田正美『社会的排除』

岩田正美は、貧困研究に関する第一人者であるとともに、ジャーナリズムに通じる抜群の現実感覚があり、しかも文章がうまいという、私が尊敬する研究者の一人である。本書はその最新作で、研究の最新成果を社会的排除論と結びつけた意欲作。 書き出しがいい。…

斉藤貴男『強いられる死』

自殺の名所とされる福井県の東尋坊に、自殺を水際で食い止める活動をしているNPOがある。2008年暮れからの3ヶ月間で、15人を自殺の淵から救い出した。そのうち7人までが、派遣切りの犠牲者だった。そして他の8人は、多重債務者、勤め先でパワハラにあった人…

ショスタコーヴィチの室内楽2

現代音楽を聞き始めた頃、愛読した本に矢野暢の『20世紀の音楽──意味空間の政治学』(音楽之友社・1985年・品切)がある。著者はアジア政治研究の権威で、スウェーデン王立科学アカデミー会員としてノーベル賞の選考にも関わったとされるが、1993年にセクシュ…