橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

東京新聞写真部編『TOKYO異形』

かつて東京新聞に「東京oh!」という連載があった。東京のありとあらゆる場所から、不思議な空間や意外な光景を探し出し、巧みな構図で切り取った写真に、短い文章を配したというもの。都市風景写真が、時には鋭い文明批評になり、あるいは一種のアブストラク…

山同敦子『至福の本格焼酎・極楽の泡盛』『愛と情熱の日本酒』

近年の本格焼酎ブーム、日本酒ブームの立役者の一人、山同敦子さんの著書を二冊。 一冊目は、二〇〇二年に出版され、「村尾」「宝山」「佐藤」、そして黒木酒造の「百年の孤独」「山ねこ」をはじめとする一連の銘柄など、今日では広く知られている本格焼酎の…

西澤晃彦『貧者の領域──誰が排除されているのか』

著者は1995年、『隠蔽された外部──都市下層のエスノグラフィー』で鮮烈なデビューを飾った。その内向的でありながら輝きを放つ文体は、都市下層というテーマに実にふさわしく、当時まだ著書のなかった私は、この年下の著者に対して、秘かに嫉妬を感じていた…

千田有紀『女性学/男性学』

遠い昔の話だが、静岡大学教養部にいた頃、「女性学」の授業を担当していたことがある。女性学と題する授業科目が大学に置かれるようになって、さほどたっていない頃だったと思う。内容としては、ジェンダーの概念から始まって、家族、教育、労働、社会参加…

北大路魯山人『料理王国』

魯山人には全3巻の分厚い著作集があるから、当然何冊もの著書があるはずだと思っていたが、意外にも著書はこれ一冊だけらしい。 彼の料理論は、グルメマンガ『美味しんぼ』の、とくに初期の頃のタネ本で、かなりのエピソードがここから引用されている。たと…

近藤克則『「健康格差社会」を生き抜く』

著者は社会疫学の専門家で、「健康格差社会」という言葉の生みの親。これまでの著作は、良くも悪しくも地味な学術書スタイルだったが、今回は完全な啓蒙書で、しかもスタイルが堂に入っている。歯切れ良く、たたみかけるように事実を提示し、明確に結論する…