橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

高杉良『生命燃ゆ』

会社の事業に命を賭ける企業戦士、というのは誉められたものではないけれど、これが理系の技術者となると、どういう訳か抵抗感が薄れる。「会社のため」というより、「産業の発展のため」、場合によっては「社会のため」という性格が多少なりとも強くなるだ…

藤木TDC『場末の酒場、一人飲み』

著者は、私の命名するところ、「ヤミ市系ルポライター」である。ヤミ市起源の飲食店街や商店街、ほとんど廃墟と化したその名残などを、執拗に追いかける。たんに眺めるだけでなく、その歴史についても資料を渉猟する。本書は、その取材・研究の成果をコンパ…

ラズウェル細木『大江戸 酒道楽』

『酒のほそ道』で知られる作者だが、この作品は江戸が舞台。酒の行商を営む大七が主人公で、江戸の酒風俗と食文化が、事細かに描き込まれている。山くじら鍋や紅葉鍋、雛祭りにいただく蛤のお吸い物、飛鳥山の花見、屋台の天ぷらなど。なかなか情報量が多く…

小林信彦『日本の喜劇人』

これは、まぎれもなく名著である。ロッパ、エノケンから書き起こし、森繁、トニー谷、フランキー堺、クレージーキャッツと書き進み、萩本欽一、たけしにまで至る喜劇・大衆演劇の昭和史は、天衣無縫、自由自在。あとがきで色川武大が「新鮮且つ鋭敏、完璧で…

大橋富雄(写真) 益子義弘・永田昌民(文・スケッチ) 『東京−変わりゆく町と人の記憶』

昭和ブームでいろんな写真集が出たが、その多くは昭和三〇年代から四〇年代を扱っていた。ところがこの本が扱うのは昭和五〇年代。私が大学生だった頃で、東京についての記憶も鮮明だ。こんな時代が、もう「歴史」として扱われるようになったのだろうか。 ペ…

日本エッセイスト・クラブ編『'10年版ベスト・エッセイ集』

日本エッセイスト・クラブが毎年、さまざまな新聞・雑誌に掲載されたエッセイから五〇編程度を選んで編むベスト・エッセイ集。今年は二次にわたる予選で一二〇編の候補作が選ばれ、最終的に五一編が掲載されている。 出版社からの掲載依頼で驚いたのだが、私…