2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧
博覧強記かつディレッタントだが、社会問題には一切関心を示さないという、あまり好きでないタイプのエッセイのはずだが、ここまでやられると脱帽である。 たとえば「筆名と異名」という一文では、筆名の付け方にもいろいろあるとして、たちどころに何十人も…
これは、重い本である。 川本三郎は1969年、朝日新聞社に入社。ただし就職浪人だったため、採用が決まった68年夏からアルバイトとして勤務していた。アルバイト期間中に安田講堂の攻防戦があり、先輩記者に誘われて取材に同行するが、シンパシーを感じる学生…
川本三郎は、ひとつのテーマにそって関係のある映画を次から次に紹介して論じていくというのをお得意にしているが、その随筆版とでもいうべきもの。 たとえば「ご飯好き」という一文では、阿川弘之、小島政二郎、子母沢寛、林芙美子、そして漫画の『孤独のグ…
私はときどき「橋本健二検索」というのをやる。Googleで「橋本健二」、これだと建築家の橋本健二さんが出てくることも多いので「橋本健二 階級」などと検索して、私に関する記事を探すのである。 いろんな記事を発見するのだが、先日見つけたのが「紙屋研究…
LP時代には聞いていたが、SACDで再入手。 1番がすばらしい。音色も美しく多彩。これまでルビンシュタインは、さほど音色の変化のないピアニストだと思っていたが、そんなことはない。SACDの最大の利点は、ソリストの音色の個性がはっきり出るところにあるよ…
これは2回目の文庫化で、初出は1979年。著者は長年にわたって町工場の旋盤工と作家の二足のわらじを履き続けた人物。町工場の日常と金属加工の現場、そして職人たちの克明な描写は、この人にしかできない。 著者は、「社会に対しても自分に対しても、辞める…
著者は1952年深川生まれの写真家で、1993年に木村伊兵衛賞を受賞しているとのこと。 子ども時代の思い出や、下町の日常や近年の変化をつづる文章と、街角の情景を捉えた写真を収めた文庫本。とくに商店には愛着があるようで、所狭しと商品の並ぶ雑貨屋兼煙草…
オープニングが有名だ。オレンジ色の夕日が大写しにされたあと、画面はクレーンにつり下げられた巨大な鉄球をとらえる。鉄球はゆっくりとコンクリートの建物に激突し、壁が崩れ落ち、ごう音が響き渡る。残されたがれきは、ブルドーザーによって片付けられて…
東京・板橋区の岩の坂にあったスラムで生まれ育った著者の回想録。これは、戦中・戦後のスラムを内部から記録した名著といっていい。 感動的なエピソードの数々をここで紹介するのは控えておいて、特徴を2点だけ記しておきたい。まず、スラムが朝鮮人差別と…
著者は1959年生まれの科学ジャーナリストとのこと。本書は世界各国の間の広い意味での富の配分と格差に関する統計を紹介するもので、所得、物価、税金、健康、識字率、教育など、幅広い問題を扱っている。ふだんから新聞や雑誌を読む人なら、半分以上くらい…
著作集にも収録されなかった池波正太郎のエッセイを集めた5冊シリーズの1冊目で、1956年から67年までの文章を集めている。特にこの時期の著者に関心があるというわけではないのだが、表紙の写真の、著者に抱かれておとなしくしている猫の写真があまりにもチ…
いま、いちばん速いペースで著書を量産している著者の一人といっていいだろう。エコノミストとはいっても、派遣労働者やセックス産業など、泥臭い問題にも関心をもつ幅広さがある。 本書も「官製不況」をキーワードに、日本企業のモラルハザード、ワーキング…
毎年、高級住宅地のランキングを作成しているムックの最新版。 東京と関西や名古屋は比較しようがないので関東だけを抜き出せば、1位田園調布、2位横浜山手、3位麻布といった具合。地域による経済格差の資料として使えないこともないのだが、データの制約が…
この本、だいぶ評判になっている。内容的には、以前取り上げた『アメリカ弱者革命』(海鳴社・2006年)の続編で、特に話題になった高校生に対する軍へのリクルート活動については、ほぼ同じようなことが書かれている。 今回新しく追加された内容で注目したいの…