橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ショスタコーヴィチの室内楽

ショスタコーヴィチといえば、多少クラシック音楽に関心があっても、交響曲しか聞いたことがないという人が多いだろう。しかし彼の室内楽には傑作が多く、ときどき無性に聞きたくなる。とくに好きなのは、15曲ある弦楽四重奏曲のいくつかと、2曲あるピアノ3…

直井優・藤田英典編『講座社会学13 階層』

いままで読んでなかったのかと言われそうだが、ようやく読了。大ベテランから中堅ホープまでを揃えた陣容だが、これは果たして『講座社会学』なのかというと疑問。総論的な章があと一つか二つ必要だったのではないかという気もするが、論文集と考えればまあ…

白波瀬佐和子『日本の不平等を考える』

著者は、少子高齢化・家族の多様化というトレンドに注目しながら、格差と不平等について論じてきた社会学者。本書はこれまでの研究の集大成ともいうべきものだろう。基本のデータは、日本については国民生活基礎調査、台湾および欧米諸国についてはルクセン…

岩井浩・福島利夫・菊地進・藤江昌嗣編著『格差社会の統計分析』

統計学という言葉には、大別して2つの意味がある。1つは、多数派の研究者が理解する意味での統計学で、理論統計学、とくに推測統計学のこと。つまり、集められたデータから各種の統計量を算出し、ここから母集団の性質を推測するための数学的方法である。も…

好井裕明『ゴジラ・モスラ・原水爆』

著者はエスノメソドロジー研究で知られる社会学者だが、映画にも関心をもっているようで、論文がいくつかある。本書は単行本として刊行されたものとしては、唯一の映画論である。 私もほぼ同世代だから、子どものころに怪獣映画に興奮した経験は共有している…

廣澤榮『私の昭和映画史』

先日読んだ『日本映画の時代』が面白かったので、こちらも読んでみた。タイトルからみると、自身の体験をまじえながら、昭和映画史をある程度包括的に論じたもののようにみえるが、実際には半分以上が映画界に身を投じる前の生い立ちの記で、後半部分も、ほ…

岩崎稔・上野千鶴子・北田暁大・小森陽一・成田龍一編著『戦後日本スタディーズ2 「60・70」年代』

大学院に入ったばかりの頃、「日本はこれでいいのか市民連合(日市連)」という団体で活動していたことがある。ベ平連に憧れていたので、その流れをくむ市民運動に参加したいと前から思っていたからだが、失望することが多かった。何より問題なのは、小田実を…

溝口敦『歌舞伎町・ヤバさの真相』

新宿にはときどき行くが、歌舞伎町に足を踏み入れたことがない人は多いはずだ。何といっても、「危ない街」イメージでは都内で、いや日本でもナンバーワンである。かくいう私も、ひととおり散策したことはあるけれど、たまにゴールデン街や大通りに近い居酒…

半藤一利『昭和史』

これは大ベストセラーだが、あまりに大部で場所をとるのでこれまで買わずにいた。ようやく文庫化されたので、読んでみることに。終戦までと終戦後の二巻構成である。 上巻は、政治+軍事史といっていい。著者は戦記物の著作が多いが、そのエッセンスが詰め込…

鎌田慧『いま、逆攻のとき』

派遣労働、外国人労働、貧困などに関して、この著者が最近書いた文章を再構成してまとめられた前半部と、川田文子、湯浅誠との対談を収めた後半部からなる。この人の文章は、ふだんから『週刊金曜日』で読んでいるので、内容的には見慣れたものが多いが、い…

小林信彦『映画を夢みて』

小林信彦の、主に若い頃に書いた映画評論集で、初出は一九九一年。これは九八年に出た文庫版である。小林信彦は一九三二年生まれだから、かろうじて戦前・戦中を経験した世代であり、戦争直後から五〇年代の映画を、リアルタイムな経験にもとづいて語ること…

吉川徹『学歴分断社会』

出版間もなく著者から送ってもらっていたのだが、ようやく読了。著者の主張は、ある意味では単純明快で、「格差社会の"主成分"は学歴だ」というもの。つまり、日本では職業に関連して定義される階級・階層よりも、大卒と高卒に二分された学歴の方が重要で、…

原清治・山内乾史『「使い捨てられる若者たち」は格差社会の象徴か』

ある日の授業のあと、学生が私のところへやってきた。 「先生って、すごいんですね。」 「は?」(なんだ、いまごろ分かったのか) 「この本で、先生のこと、すごくほめてありましたよ。」 と、学生が差し出したのが、この本。二人の著者は教育社会学が専門と…

廣澤榮『日本映画の時代』

著者は、黒澤明、成瀬巳喜男、豊田四郎などの助監督を務めたあと、シナリオライターとして活躍した人物。シナリオライターとしては「サンダカン八番娼館 望郷」などを手がけているが、さほど多くの作品があるわけではない。しかし戦後映画史の生き証人として…

塩見鮮一郎『貧民の帝都』

著者は、被差別民の歴史に関する著作で知られ、なかでも江戸時代の非人についての著作が多いが、本書の対象は近代で、幕末から敗戦後までを扱っている。 明治維新によって大名と家臣たちは地方に帰ったが、これによって江戸と地方の性格は大きく変わる。地方…

さいとうたかを『ゴルゴ13 真のベルリン市民』

このマンガ、以前は全巻持っていたのだが、本棚が狭くなったので処分し、それからあまり読んでいない。何となくタイトルにひかれて、久しぶりに買ってみた。一五二巻目とのことである。一〇〇巻を突破したのは、つい最近のような気がしていたのだが。 表題作…