橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

永井荷風を読む2

川本三郎編のアンソロジーは、エッセイだけではなく短編小説、そして「濹東綺譚」「つゆのあとさき」などの小説の抜粋も含めた、まさに入門的アンソロジーだが、野口冨士男の編んだこちらは、エッセイに絞って体系的に集めたもの。上下二巻に分かれていて、…

永井荷風を読む1

英国にいて、なぜこんなものを読むのかと思われそうだが、逆にいえば、日本にいるときは、他に読まなければならない本がたくさんありすぎて、なかなか読めないのである。どこか山奥の別荘でもあれば、読めるのかもしれないが、そんなものは持ち合わせていな…

小林信彦『映画×東京 とっておき雑学ノート』

エッセイを読むのは好きだが、リアルタイムで読むことは少ない。一般週刊誌や総合雑誌を毎回買うことはないし、単行本を買うのも、文庫化されてから、あるいは評価が出てきてからということが多いからだ。そもそも、身辺のことや文学・映画などについて書か…

こうの史代『夕凪の街 桜の国』

2004年刊の文庫化。紙屋研究所の紙屋高雪さんが絶賛していたので、手に取ってみた。広島の被爆少女と、その家族たちの、美しくも哀しい物語である。 原爆投下の10年後の広島の川のほとり、「お前の住む世界はそっちではない」という声におびえる少女が、はじ…

鈴木邦男・川本三郎『本と映画と「70年」を語ろう』

これは、異色の対談。鈴木邦男は新右翼のイデオローグだが、「赤衛軍事件」で逮捕された川本に、ずっとシンパシーを感じ続けていたという。右翼とはいっても、偏狭なナショナリズムでも体制派でもなく、思想的にはともかく政治的にはむしろ左翼に接近する場…

坂崎重盛『東京本遊覧記』

『環境緑化新聞』という業界紙に連載されている東京本案内をまとめたもの。著者の主な関心は、時期的には明治、分野としては風景と文学にあるので、私とは少しずれるのだが、それでもずいぶん役に立つ。サッポロライオンの社史、『ビヤホールに乾杯』を取り…