橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

池内紀『東京ひとり散歩』

『中央公論』に連載していたエッセイを中心に、『東京人』に書いた二篇を加えてまとめたもの。池内紀センセイが、兜町から霞ヶ関、向島、両国、浅草など、都内各地を散歩しては歴史と大衆文化、そして最近の世相に思いをめぐらす企画である。 もとより、中公…

西澤泰彦『日本の植民地建築』

植民地建築という新鮮な視点から近代建築を論じて、注目されてきた著者の新著。この著者がこれまで出版してきたのは、専門書か写真中心のビジュアル本だったが、本書は初めての教養書といっていいだろう。 著者によると日本は、支配下に置いた中国・台湾・朝…

『古典酒場』Vol.8

このムックも、もう8号になった。今回のお題は「日本酒酒場」である。「吉本」「鍵屋」「伊勢藤」「串駒」などの有名店も揃えているが、「立呑屋」「清瀧」それにカップ酒の店と、大衆的な店もカバーしている。後ろの方には、連載のブロガー座談会もあり、私…

坂崎重盛『東京読書』

『環境緑化新聞』という業界紙に連載されている東京本案内をまとめたもので、『東京本遊覧記』の続編。「少々造園的心情による」という副題がついているが、著者は、かつて造園を学び、公務員として造園にかかわったことがあるとのこと。扱われる本は文学を…

雁屋哲・花咲アキラ『美味しんぼ』103巻

今回は全ページが「日本全県味巡り・和歌山編」にあてられている。最近はこのパターンが多く、郷土料理に興味のない人は買う必要がない。前回の「青森編」と同じことを書くしかないのだが、「究極」「至高」とは性質が違うだろうという郷土料理が、これでも…

島田裕巳『教養としての日本宗教事件史』

私の『「格差」の戦後史」と同じく、河出ブックス第一弾の一冊である。この著者、そしてタイトルからは、創価学会、統一協会、オウム、幸福の科学など、新興宗教・新宗教の引き起こした事件の数々を網羅的に論じた本を想像する人も多いだろう。しかし、内容…

藤井淑禎『御三家歌謡映画の黄金時代』

これも、昔のB級映画を扱ったもの。「橋・舟木・西郷の『青春』と『あの頃』の日本」という副題があり、この三人の主演した歌謡映画を通じて、高度経済成長期の日本を振り返ろうというわけである。 著者によると、歌謡映画では人気歌手が普通の若者を演じ、…

新著発売 『「格差」の戦後史』

本日、発売されました。河出書房新社の新しい選書シリーズ、「河出ブックス」の第1弾、6冊のうちの一冊です。229ページで1260円はお買い得?ちなみにAmazonは現在、全品送料無料キャンペーン中なので、この値段でも送料無料になります。 「格差」の戦後史--…

岩崎稔・上野千鶴子・北田暁大・小森陽一・成田龍一編著『戦後日本スタディーズ1 「40・50」年代』

『戦後日本スタディーズ』も、これで完結。今回は年代が古いこともあり、歴史書という印象がぐっと強くなった。座談会とインタビュー、11本の論文から構成されている。著者たちのスタンスを大別すれば、次の三つになるだろうか。 第1は、戦中から戦後にかけ…

橋本治「巡礼」

四大紙をはじめ、多くのメディアで絶賛されている小説。ちょっと興味があったので、読んでみた。 とある郊外の住宅地の一角、かつては商家で、今は初老の男が一人で暮らす家が「ゴミ屋敷」になる。周辺の住民は、ゴミの散乱と悪臭に悩まされ、市に対策を求め…

ウィルキンソン『格差社会の衝撃』

経済的な格差が人々の健康に悪影響を及ぼすことについては、すでにカワチ&ケネディが『不平等が健康を損なう』(日本評論社)で明らかにしており、国内でも近藤克則や川上憲人らの研究がある。しかし本書は、あらゆる意味で決定版といっていい。自分の行って…