橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

加藤佳一『一日乗車券で出かける東京バス散歩』

ふだん、あまりバスに乗ることがない。私鉄と地下鉄で用が足りているからだが、渋滞などあって時間が読みにくいというのも大きな理由である。しかし、東京の名所や施設を見物に出かけるのなら、いい乗り物だと思う。ただ、路線があまり頭に入っていないので…

安田武『昭和 東京・私史』

著者は一九二二年東京の巣鴨に生まれた。思想の科学研究会会長で、文筆家。本書は子ども時代から日米開戦までの、東京にまつわる思い出を綴ったものである。 印象深いのは、結核で若くして死んだ人々の思い出。とくに、幼稚園の柴崎先生、白木屋店員時代に若…

小林信彦『一少年の観た〈聖戦〉』

小林信彦は一九三二年生まれ。太平洋戦争から敗戦にかけての時期は、九歳から一二歳である。タイトルからは、その小林少年が目撃した戦時の日本を描いたもののように見えるが、実は大部分が当時観た映画にあてられている。ともかく、よく映画を観ているのに…

濱谷浩『市の音 一九三〇年代・東京』

濱谷浩は、一九一五年に生まれ、一九九九年に没した写真家。東京生まれの多くの写真家と同様、下町・下谷区車坂の生まれである。一九一三年生まれの桑原甲子雄とほぼ同時期に、同じ町で生まれたわけである。写真に民俗学的な視点を持ち込み、「日本常民の心…

松山巌『路上の症候群』

「松山巌の仕事Ⅰ/Ⅱ」という副題付きで、二〇〇一年に出版された二巻本の一冊目。著者は東京芸大の建築学科を出て、建築事務所を営んだ後、文筆業に転じた人。いちばん有名な著作は、『乱歩と東京』だろうか。そのため建築論・都市論のイメージが強いが、小…

桑原甲子雄『私の写真史』

桑原甲子雄という写真家は、その七〇年以上にもわたるキャリアを通じて、東京の姿を執拗に追いかけ続けた。何か独創的というわけではなく、ともかく継続の力を感じさせる作品群を残した。ここから何となく、インテリでも天才でもなく、職人肌の人物かと思っ…

小林信彦『日本橋バビロン』

小林信彦の三部作では、この作品だけ、途中まで読んで放置していた。改めて最初から通読。おそらく、三部作の中ではこれが最高傑作だろう。 「流される」は母方の祖父から説き起こされていたが、こちらは著者が二歳の時に亡くなった父方の祖父とその長男であ…

小林信彦『流される』

小林信彦には、戦中から戦後にかけてを中心とした自伝的作品が多い。これらには完全に小説の形をとったものもあれば、エッセイとして書かれたものもある。この作品は『東京少年』『日本橋バビロン』に続く「自伝的小説」三部作の完結編とのことで、事実を中…

川本三郎『時には漫画の話を』

久しぶりに、読書&音盤ブログを再開。といっても続くかどうか保証の限りではない。 川本三郎は漫画にも詳しいが、おそらくこれまで、漫画だけを扱った単著はなかったはず。これが初めての漫画評論集ということになる。さまざまな雑誌に書いた文章を集めたも…