橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

湯浅誠『反貧困』

著者は『貧困襲来』という著書でも知られるが、反貧困運動の最前線に立ち続けている人物。私より10歳ほど年下だが、心から尊敬できる数少ない人物の1人である。
実践家であるだけではない。大学院の博士課程まで出た経歴を持ち、「貧困ビジネス」「5重の排除」「溜めの欠如」といった独自の概念で現状を分析してみせるほか、専門的な学術誌や英文の報告書なども含めて、数々の文献資料をも活用しながら、拡大・深刻化する日本の貧困の現状と、行政の問題点を明らかにしてみせる。かと思うと、生活保護基準を引き下げようとする厚生労働省の動きを察知し、機敏に行動する。
現代日本を代表する素晴らしいドキュメントで、昨年来いくつも出版されている貧困関係本の極めつけともいうべきもの。ぜひ、読んでください。

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

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