橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

コリン・ジョイス『「ニッポン社会」入門』

1992年から日本に住むイギリス人ジャーナリストによる、抱腹絶倒の日本論。持ち前のユーモアセンスと豊富な日本体験がもたらした、傑作エッセイである。
日本人もなかなか気づかない洞察もあり、たとえば日本語の男言葉と女言葉について「外国の女優の吹き替えをする声優以外に、実際に女言葉を使っている人などいるのだろうか」とは鋭い。「都電は動くタイムマシン」というのも、なるほどと思わせる。
著者は酒好きで、酒についてもいろいろと書かれている。初めて日本に来た頃、日本のビールがみんな同じような味なのに失望して「サイダー」を買い、「日本のサイダーはリンゴを原料としたビールではないということに気づいたとき、僕はもう泣き出しそうになってしまった」とは、深く同情する。ちなみに日本の飲み屋でお勧めは、神谷バー、ポパイ、九段会館、銀座のライオンだとのこと。「イギリス人が読みたがる日本のニュース」は、日本がヨーロッパ人の頭の中に占める位置がどの程度のものであるかを知るのに役立つ。
この著者とは、ぜひ下町の居酒屋でいっしょに飲んでみたいものだ。

「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)

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