橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』

この本、だいぶ評判になっている。内容的には、以前取り上げた『アメリカ弱者革命』(海鳴社・2006年)の続編で、特に話題になった高校生に対する軍へのリクルート活動については、ほぼ同じようなことが書かれている。
今回新しく追加された内容で注目したいのは、貧困から脱出するために軍の勧誘に応じるという構造が、高校生だけではなく大学生、失業者などに広がり、しかも勧誘する主体が軍だけでなくハリバートンなどの民間企業にまで広がっているということ。あるNGOスタッフの、もはや徴兵制など必要ない、政府は格差を拡大する政策を打ち出すだけでいい、という指摘がすべてを物語る。州兵としてイラクで従軍した日本人青年が、日本国憲法第9条について聞かれて「アメリカ社会が私から奪ったのは25条です」と答えるところも、これに連続する。
日本にとっても人ごとではない。格差問題は平和問題とどこかで接続させなければならないとは思っていた。以前から、就職機会に恵まれない地方の高校生を自衛隊が勧誘していると指摘されているが、さらに問題が広がっていないか、検証していく必要がある。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)