橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

『セオリー2008 vol.2 高級住宅街の真実』

毎年、高級住宅地のランキングを作成しているムックの最新版。

東京と関西や名古屋は比較しようがないので関東だけを抜き出せば、1位田園調布、2位横浜山手、3位麻布といった具合。地域による経済格差の資料として使えないこともないのだが、データの制約が大きい。たとえば、田園調布3丁目の世帯平均年収が 871万円、同じく成城4丁目が928万円などと推計されているが、こんなに低いはずはない。国勢調査の町丁目別集計を基礎にしているらしいが、この集計は近年簡素化され、ものすごく大ざっぱになっているから、ほとんど役に立たない。唯一信頼できるデータは、高額納税者公示だったが、2004年分を最後に廃止されてしまった。今後は、断片的情報から推測するしかなさそうだ。

藤森照信泉麻人の対談は面白いが、田園調布が高級イメージを持つようになったのは昭和30年代から、というのはちょっと違うのではないか。泉は昭和30年代に石坂洋次郎が小説に書いているというが(『陽のあたる坂道』のこと)、 1949年には木下恵介が、阪東妻三郎演ずる成金が田園調布に住む映画を作っている。