橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

紙屋高雪『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』

私はときどき「橋本健二検索」というのをやる。Googleで「橋本健二」、これだと建築家の橋本健二さんが出てくることも多いので「橋本健二 階級」などと検索して、私に関する記事を探すのである。

いろんな記事を発見するのだが、先日見つけたのが「紙屋研究所」というサイトの書評。主にマンガ評論のサイトなのだが、私の『新しい階級社会 新しい階級闘争』に対する書評もある。1万字近い長文で、本書に対する、おそらく最長の書評である。私の意図をよく理解しておられ、赤木智弘『若者を見殺しにする国』の「学問」的表現だという指摘など、わが意を得たりというところも多い。私がマンガを取り上げた部分について「型紙で漫画を裁断しているような生硬さがある」という指摘もあり、これもまあ、マンガ評論をやる人から見ればそうだろうなと、納得できる部分もある。

書評をまとめた本があるというので、さっそく買って読んでみた。取り上げられているのは私の知らないマンガが大部分で、オタクを自称するとおり美少女ものも多いのだが、その中に鋭くジェンダー闘争を読み込んだりしているところなど、たいへん面白い。近年のフリーター問題やワーキングプア問題にも大いに関心をお持ちのようで、「闇金ウシジマくん」についての長文の評論など、総合雑誌に載ってもいいくらいの充実した作品である。

前書きでは「マンガというものが社会意識の強烈な反映であり、社会対立や経済矛盾、性意識などが鋭く織り込まれていて、そのことをもっと引きずり出して語り合ったりする」ことが必要だと宣言しているが、まったく同感。こんな論者が、インターネットから登場してくるというのは、たいへん心強い。

1点だけ。318ページで、私の名前が「橋本健一」になってるよ(笑)。


オタクコミュニスト超絶マンガ評論

オタクコミュニスト超絶マンガ評論