橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

川本三郎『マイ・バック・ページ──ある60年代の物語』

これは、重い本である。

川本三郎は1969年、朝日新聞社に入社。ただし就職浪人だったため、採用が決まった68年夏からアルバイトとして勤務していた。アルバイト期間中に安田講堂の攻防戦があり、先輩記者に誘われて取材に同行するが、シンパシーを感じる学生たちを前にして自分だけ安全地帯にいることに耐えられず、外に出てしまう。「センス・オブ・ギルティ」である。

著者はそんな「センス・オブ・ギルティ」を持ち続ける。取材は取材と割り切る、あるいは使命感から取材に徹する先輩たちとは、どうも感覚が違う。

 そんなとき、武装闘争を計画する自称・活動家に出会う。有名大学の、あるいは名のある運動体の人間ではない。しかし彼を信じて「武装闘争」の経過を取材、結果的に証拠隠滅罪に問われてしまう(いわゆる赤衛軍事件)。この経過と結果については、ここで明かすのも無粋なので控えておく。

問題にしたいのは「センス・オブ・ギルティ」である。60年代のような特殊な状況でなくても、それは常につきまとう。海外の問題は、ひとまず措くとしても、現代日本には格差と貧困の中で苦しみ、あるいは闘っている人々がいることを、われわれは知っている。にもかかわらず、自分は何をしているのか。私のように格差や貧困の問題を言論の場で扱っている者ならもちろんのこと、正社員などとして平均以上の生活をしている人々なら、無縁とはいえない。現在は品切れ。古本も、なかなか入手できないようだ。