橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

エジンバラ国際フェスティバル「スティーブ・ライヒ・イブニング」

エジンバラ国際フェスティバルでは、演劇、音楽、ダンス、大道芸など、いろいろなジャンルの公演が行われるが、ダンス部門での呼び物のひとつが、このSteve Reich Evening。8月15日から17日まで3日連続で行われたが、私が見に行ったのは1日目。 スプリンクラーの故障でステージが水浸しになったとかで、開演が遅れてはらはらさせられたが、50分ほど遅れてステージは始まった。音楽演奏はIctus、ダンスはRosasという集団が受け持った。
この作品は、ライヒの6つの作品と、関連するリゲティのひとつの作品、計7曲とダンスを組み合わせたもの。構成は、なかなか考えられている。まずは「ペンドラム・ミュージック」で観客の耳を慣れさせ、次に「マリンバ・フェーズ」でライヒミニマル・ミュージックの世界に引き込んだ後、ほぼ同一作品といっていい「ピアノ・フェーズ」からダンスが始まる。ダンスでは、さすがにこの曲のモアレ効果までは十分に表現できないようだが、それでも二人の女性ダンサーが少しずつずれながら回転するところなど、ライヒの世界がある程度までは表現されていた。
すばらしかったのは、次の「エイト・ラインズ」。改訂前は「オクテット」と呼ばれていた作品で、ピアノ、バス・クラリネットクラリネット、フルート、ピッコロ、弦楽などがそれぞれに旋律を繰り返しながらからみあうという、ライヒの代表作。これを8人の女性ダンサーが、それぞれに声部を受け持つ形で表現する。とくに、バスクラリネットを担当した黒人女性の力強い演技、そしてフルートを受け持った白人女性の激しい表現力が印象に残る。
「フォー・オルガン」は男性ダンサー5人による演技だったが、曲自体が駄作(私の主観)なので、あまりどうということはない。次はリゲティの「ポエム・シンフォニーク」。これは、ステージ上に並べられた周期の異なる多数のメトロノームを、動力を失って止まるまで鳴らし続けるというもので、この曲に続いて「ドラミング」を演奏するという構成は、見事。ダンスも、すばらしかった。アンコールは「木片の音楽」で、先の黒人女性が全体を引き締めて好演。
「フォー・オルガン」の中だるみが残念だが、全体としてみれば、作品・演奏・演技とも満足できるものだった。私の席は、ステージから5列目の右よりで、わずか23ユーロ(3800円)。こんなすばらしい芸術祭を楽しめるエジンバラ市民がうらやましい。