橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

エジンバラ国際フェスティバル ゲルギエフ/LSOのプロコフィエフ

こちらは、音楽部門最大のイベント。ワレリー・ゲルギエフ指揮のロンドン交響楽団による、プロコフィエフ交響曲全曲演奏会で、しかも核になる交響曲第 5番を含むプログラムである。チケットは早々と売り切れたようで、発売直後にインターネットで日本から入手できたのは幸運だった。私の席は、前から11列目のやや右寄りで、これでもわずか38ユーロ(6200円)。
1曲目は交響曲第4番。古典主義的な導入部から、次第に前衛的な性格を強めていく曲だが、やや全体像をつかみにくい。ゲルギエフ自身、どちらかといえばドラマチックな曲を得意とするタイプだということもあり、ちっょと評価はしがたいところがある。

2曲目は、交響的協奏曲で、ソリストはロシアの新鋭・タチアナ・ヴァシリエヴァ。若き日のロストロポーヴィチを想定して作られた技巧的な曲だが、繊細な旋律も随所に現れる。この演奏では、まず第1に賞賛されるべきは、ヴァシリエヴァの驚異的なテクニックと力強い表現力だろう。音量もたっぷりで、今後が楽しみなチェリストである。
3曲目は、交響曲第5番。冒頭から聴衆の耳をとらえて放さない、圧倒的演奏だった。とくに第1楽章と第2楽章は、まったく緩むところなくオーケストラを鳴らし切った、すばらしい名演奏。第4楽章では、若干アンサンブルの乱れがあり、やや散漫になる個所もあったが、最後は完璧に締めてくれた。
ゲルギエフは2007年にロンドン交響楽団の主席指揮者に就任、プロコフィエフ交響曲全曲演奏は、その少し前から始まり、世界で話題を呼んでおり、 CDも出ている。この11-12月には、日本でも全曲演奏会が行われる予定で、チケットは既に発売中。関心にある方はお聴き逃しなく。ただし、東京公演の S席は27000円らしい。(2008.8.16、アッシャー・ホール)