橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

デイズ・ジャパン 8月号/9月号


 9月6日に日本に帰ってから、たまりにたまった数十冊の雑誌に目を通しているところ。今朝読んだのは、このDAYS JAPAN。相変わらずがんばっている雑誌である。どうして日本では、このような硬派のジャーリズムがメジャーにならないのか。実は、なりかけたこともあったのである。

 以前も書いたことがあるが、1987年から約2年間、これと同じDAYS JAPANという名の雑誌が、講談社から発行されていた。フォト・ジャーナリストの広河隆一が中心的な役割を果たしていたのも同じで、すばらしい雑誌だった。

 なぜ、わずか2年で廃刊になったのか。その顛末を、広河自身が9月号に書いている。創刊直後は、大人の男性向けのハイ・クオリティ雑誌として外資系企業を中心に高い評価を得て、広告料も集まった。ところが講談社内の縄張り争いや、反原発・環境問題重視などの姿勢が、講談社の雑誌全体に対する広告主の反発を招くのではないかという危惧があり、そこに起こったアグネス・チャンの講演料をめぐる誤報がきっかけとなって、編集者たちの知らないところで廃刊が決まってしまう。この経緯についての記述には、はっきりしないところが多い。広河氏をもってしても書けないことがあるのか、本当にわからないのか。かつてのDAYS JAPANを知る人は、必読。

 斎藤美奈子の連載「OUTLOOK」は、毎回楽しみに読んでいる記事だが、8月号では私の著書が取り上げられている。といっても、最新著の『居酒屋ほろ酔い考現学』ではなく、昨年出した『新しい階級社会 新しい階級闘争』。斎藤氏は、秋葉原で起きた無差別大量殺傷事件に関連して、このままでは階級的な不満や怒りの爆発、残忍な犯罪という形で「新しい階級闘争」が噴出するだろうという私の記述を取り上げ、「橋本氏の暗い予言が的中したかっこうだ」と述べておられる。格差拡大と貧困の増大を深刻に受け止めていた人の多くが、うすうす感じていた程度のことに過ぎないと思うが、的中したというのはたしかにその通りだ。