橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

ロバート・ライシュ『暴走する資本主義』


 この本も、日本に帰ったらすぐに読みたいと思っていた本。ちなみに、『暴走する資本主義』という書名は、すでに使われている(本間重紀著・1998年)。アンドルー・グリン『狂奔する資本主義』(ダイヤモンド社・2007年)の訳者に聞いた話だが、原書名の"Capitalism Unleashed"をはじめは「暴走する資本主義」と訳そうと考えたが、すでに使われているので避けたとのこと。ライシュのこの本の原書名は"Supercapitalism"なので、かなり意訳が入っている。

 題名に反して、ライシュの主張はクルーグマンに比べると穏健である。ライシュは超資本主義がもたらした格差の拡大や民主主義の衰退は、技術革新と競争の結果であり、人々が自らの市民としての側面よりも消費者・投資家としての側面を優先させることからもたらされたものだという。大型ショッピングセンターのお買い得品を選ぶというような人々の行動の積み重ねの結果だというわけだ。

 その意味では、格差拡大の責任主体を曖昧にするものともいえるが、たしかにその側面もあるわけで、クルーグマンの『格差はつくられた』と併せて読まれるべきものだろう。日本の現実に即した日本版が書かれる必要があるのは、この本も同じである。


暴走する資本主義

暴走する資本主義