橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

関岡英之『拒否できない日本』

一九八〇年代末に始まり、小泉政権下で推進された、いわゆる「構造改革」路線・新自由主義路線が、実は米国からの圧力で進められたものだというのは、すでにいくつかの指摘がある。本書は、この米国の圧力が「年次改革要望書」というはっきりした形をとったものであること、これが項目ごとに各省庁に割り振られ、内部の検討や審議会を経て実行に移されるものであること、その中には米国の制度を押しつけて米国優位のもとでの競争を強いるものが少なくないことなどを明らかにしたもの。日本の格差拡大を生み出した最大の元凶が、ここにあることは間違いがない。
扱われている事例は多いとはいえないが、米国による押しつけのメカニズムそのものは充分に明らかにされている。米国のいうままに金融緩和を進めた結果、日本は経済を破綻させて「失われた九〇年代」を生み出し、多くの自営業・中小企業を倒産に追い込んだ。こうした事実を挙げながら著者は、米国の世論調査レーガンが「アメリカ史上もっとも偉大な大統領」に選ばれたのは、最大の軍事的ライバルであるソ連と、最大の経済的ライバルである日本という二つの敵を打倒したからではないかと示唆する。
本書は出版されたしばらく後からかなり話題になり、あちこちで引用されているが、金融政策、公共事業、雇用政策などについて、本書の問題提起を受け継いだ各論があれば、さらに説得力が増すと思われる。

拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる (文春新書)

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