橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

雁屋哲・花咲アキラ『美味しんぼ』102巻


 以前、雑誌の連載の段階で取り上げた、父子の和解を中心とするストーリーで、一巻が埋め尽くされている。ゆう子の策略で、「究極」と「至高」が「どれだけ相手を喜ばせることが出来るか」をめぐって闘うことになる。こうして士郎は、雄山を喜ばせるための料理をつくらなければならなくなるのである。

 雄山は、妻と士郎と三人の家庭の思い出が詰まった料理を次から次へと繰り出し、しまいには高校時代に士郎が母親の誕生日に作った料理を出してみせる。これに対抗して士郎は、雄山が与えることの出来なかったのは家族の団らんだとして、一家の団らんを演出する料理を出す。

 和解だというが、雄山はもともと士郎をことさらに憎んでいるわけではない一方、士郎の心が変化していく過程がはっきり描かれているとはいえない。だから、これで和解したといわれても、腑に落ちない部分が多い。これは、その前の段階で、士郎の心を動かそうとする雄山の計らいに、かえって反発する士郎の姿を極端に描きすぎたことにもよろう。作品最大の山場を、うまく作り上げることが出来たかというと、疑問が残る。これは、和解のクライマックスに置かれた料理「ロブスターのトリュフソースとトリュフのパスタ」が、一家団らんの料理としてあまりに非現実的であることとも関係がある。

 「日本全県味巡り」は、まだまだ続くらしい。47都道府県全部を回るとすると、あと10年くらいかかるのではないか。気の長い話である。


美味しんぼ 102 (ビッグコミックス)

美味しんぼ 102 (ビッグコミックス)