橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

酒・料理

ラズウェル細木『大江戸 酒道楽』

『酒のほそ道』で知られる作者だが、この作品は江戸が舞台。酒の行商を営む大七が主人公で、江戸の酒風俗と食文化が、事細かに描き込まれている。山くじら鍋や紅葉鍋、雛祭りにいただく蛤のお吸い物、飛鳥山の花見、屋台の天ぷらなど。なかなか情報量が多く…

山同敦子『至福の本格焼酎・極楽の泡盛』『愛と情熱の日本酒』

近年の本格焼酎ブーム、日本酒ブームの立役者の一人、山同敦子さんの著書を二冊。 一冊目は、二〇〇二年に出版され、「村尾」「宝山」「佐藤」、そして黒木酒造の「百年の孤独」「山ねこ」をはじめとする一連の銘柄など、今日では広く知られている本格焼酎の…

北大路魯山人『料理王国』

魯山人には全3巻の分厚い著作集があるから、当然何冊もの著書があるはずだと思っていたが、意外にも著書はこれ一冊だけらしい。 彼の料理論は、グルメマンガ『美味しんぼ』の、とくに初期の頃のタネ本で、かなりのエピソードがここから引用されている。たと…

古賀邦正『ウイスキーの科学』

講談社の科学系新書・ブルーバックスの一冊。以前、同じシリーズの『ビールの科学』を紹介したことがあるが、これはサッポロビールの人が書いたものだった。こちらはサントリーの研究企画部長などを歴任した著者によるもので、ブレンドウイスキーの「響」を…

阿部健『どぶろくと女』

著者は酒のマーケティングと酒文化の普及に、長年携わってきた人物。その経験と蓄積に加え、退職後の十数年を費やして資料・文献を渉猟し、まとめたのが本書である。全六二九ページ、目次だけでも一二ページという大冊だ。 記述は縄文期に始まり、万葉の時代…

友里征耶『グルメの嘘』

著者は「激辛」グルメライターとして知られる人物。批判された料理店関係者が大勢で自宅に乗り込んできたり、家族への危害をほのめかして脅迫されたりしたこともあるという。その激辛ぶりは、「友里征耶の行っていい店わるい店」で知ることができる。とくに…

『古典酒場』Vol.8

このムックも、もう8号になった。今回のお題は「日本酒酒場」である。「吉本」「鍵屋」「伊勢藤」「串駒」などの有名店も揃えているが、「立呑屋」「清瀧」それにカップ酒の店と、大衆的な店もカバーしている。後ろの方には、連載のブロガー座談会もあり、私…

雁屋哲・花咲アキラ『美味しんぼ』103巻

今回は全ページが「日本全県味巡り・和歌山編」にあてられている。最近はこのパターンが多く、郷土料理に興味のない人は買う必要がない。前回の「青森編」と同じことを書くしかないのだが、「究極」「至高」とは性質が違うだろうという郷土料理が、これでも…

青木正児『酒の肴・抱樽酒話』

原著は1948年と1950年で、これが一冊にまとめられたのが1962年、改版を経て文庫化されたのが、本書である。 文学や歴史を専門とする人には、ときどき驚くほど博識な人を見かけるが、この著者などはその最たるものだろう。中国古典文学を専門としていたようだ…

落希一郎『僕がワイナリーを作った理由』

新潟市の西、かつて巻町といった場所に、カーブ・ドッチというワイナリーがある。落さんのカーブだから、カーブ・ド・オチ。著者は創業社長である。ワイナリーには、レストランやホール、温泉付きの宿泊施設があり、地元客だけでなく東京などからやってくる…

西健一郎『日本のおかず』

東京の日本料理では最高峰ともいわれる、新橋・京味のご主人が、家庭で作ることのできるお総菜を中心に解説した本で、かなり評判になっている。 レシピはシンプルで、理にかなっている。さっそく2種類ほど作ってみたが、レシピどおりにすると、意外に味が濃…

村上春樹『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』

この夏、アイラ島へ行って、何カ所かのディスティラリーを見学してきた。もともとアイレイウイスキーは好きだったのだが、それ以来ますます好きになり、今では食後から寝るまでの間の酒は、たいがいウイスキーである。ロックでなめるように飲む。これまでは…

古谷三敏『BARレモン・ハート 24』

先日23巻を手に入れて読んだばかりだが、今度は24巻が出た。今回も13のストーリーを収めているが、酒に関するうんちくを生かした、おしゃれで知的な雰囲気のものが多い。 「島育ち」──登場するのは、「ザ・シックス・アイル」というウイスキー。スコットラン…

古谷三敏『BARレモン・ハート 23』

この作品、連載開始から20年以上経つが、ようやく23巻。粗製濫造はせず、良い水準を保っているといっていい。今回は、13のストーリーを収めている。 「予期せぬ掘り出し物」──アードベッグにこんな酒(セレンディピティ)があるとは知らなかった。いかにも松ち…

雁屋哲・花咲アキラ『美味しんぼ』102巻

以前、雑誌の連載の段階で取り上げた、父子の和解を中心とするストーリーで、一巻が埋め尽くされている。ゆう子の策略で、「究極」と「至高」が「どれだけ相手を喜ばせることが出来るか」をめぐって闘うことになる。こうして士郎は、雄山を喜ばせるための料…

森まゆみ『懐かしの昭和を食べ歩く』

ご存じ森まゆみさんが、東京・横浜の老舗を食べ歩きながら、ご主人や女将さんに先代や創業当時の思い出話を聞くという趣向。ありがちな企画だが、さすが森さん、ツボを押さえたインタビューで読ませてくれる。 「予約なんぞは下町らしくないし」と満員の店を…

『ミシュランガイド東京2008』

こんなもの、買うつもりはなかったのだが、必要があって購入。はっきりいって、行ったことのある店は一つもない(笑)。しかし、食べたことはなくても、この本がけっこういい加減なものであるということはよくわかる。 まず、都心および準都心8区(品川・渋谷・…