橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

ショスタコーヴィチの室内楽

 ショスタコーヴィチといえば、多少クラシック音楽に関心があっても、交響曲しか聞いたことがないという人が多いだろう。しかし彼の室内楽には傑作が多く、ときどき無性に聞きたくなる。とくに好きなのは、15曲ある弦楽四重奏曲のいくつかと、2曲あるピアノ3重奏曲。ピアノ3重奏曲の第2番は円熟期の傑作で、演奏の数も多いが、SACDが少ないのが残念。これは最近入手したSACDで、2006年の録音。

 ある時期までのショスタコーヴィチ室内楽の演奏スタイルは、作曲者自身の演奏がそうだったように、無骨にリズムを刻む演奏が多かった。作品の本質をとらえるという意味では、これは正しいやり方で、リズムを恣意的に揺らす演奏、たとえばアルゲリッチクレーメルマイスキーの3人による演奏などは、最悪の効果しか生まない。しかし最近は、リズムは崩さないものの、伸びやかに旋律を奏でる演奏が多くなってきたようだ。このアルバムもそうで、まるでブラームスのように聞こえる内省的で流麗な演奏だが、本質は崩していない。ハイブリッドなので、一般のCDプレーヤーでも聞くことができるが、SACDの効果は素晴らしい。


Piano Trios (Hybr)

Piano Trios (Hybr)