秋本治「東京深川三代目」
先日読んだ『昭和マンガ家伝説』で、平岡正明が激賞していたのがこれ。近所の古本屋でたまたま売っていたので、買ってみた。
たしかにこれは、いい作品である。深川にある立花工務店の孫娘・静は、子どものころから祖父の仕事現場に入り浸り、将来は大工になって家を継ぐと決めている。ところが祖父と違って腕の立たない父親は、静に「おまえだけはこんな世界に入っちゃいけません!立派な女子大生になって将来は丸の内のOLになるんですよ」などという。
昭和から平成にかけての時期の作品。地域の祭に理解のない教師との確執、地上げ屋の攻勢、マンション新住民との関係など、下町の現在がよく描かれている。作者によると、変わりゆく東京に哀愁を感じ、『こち亀』で描ききれない部分を描いたのだという。丁寧な取材の上で作られた作品であることは、読んでいてよく分かる。おすすめ東京本の一冊に加えたい。
- 作者: 秋本治
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1991/02/20
- メディア: コミック
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