橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

マンガ

川本三郎『時には漫画の話を』

久しぶりに、読書&音盤ブログを再開。といっても続くかどうか保証の限りではない。 川本三郎は漫画にも詳しいが、おそらくこれまで、漫画だけを扱った単著はなかったはず。これが初めての漫画評論集ということになる。さまざまな雑誌に書いた文章を集めたも…

ラズウェル細木『大江戸 酒道楽』

『酒のほそ道』で知られる作者だが、この作品は江戸が舞台。酒の行商を営む大七が主人公で、江戸の酒風俗と食文化が、事細かに描き込まれている。山くじら鍋や紅葉鍋、雛祭りにいただく蛤のお吸い物、飛鳥山の花見、屋台の天ぷらなど。なかなか情報量が多く…

松田奈緒子『スラム団地』

団地つながりで、マンガを一冊。福岡の団地で子ども時代を過ごした著者が、当時の思い出を綴ったコミックエッセイである。時代は一九七〇年代としか書かれておらず、著者の年齢も定かでないため、いつの出来事か正確にはわからない。しかし、小学校六年のク…

『九段坂下クロニクル』

東京・九段下に、今川小路共同建築、通称・九段下ビルという建物がある。1927年の完成で、築後80年を超える長屋形式の耐火建築だ。戦前から戦後へと、多くの物語を育んできたに違いない建物だが、これを共通の舞台としたオムニバスマンガが本書。全四編。出…

雁屋哲・花咲アキラ『美味しんぼ』103巻

今回は全ページが「日本全県味巡り・和歌山編」にあてられている。最近はこのパターンが多く、郷土料理に興味のない人は買う必要がない。前回の「青森編」と同じことを書くしかないのだが、「究極」「至高」とは性質が違うだろうという郷土料理が、これでも…

秋本治「東京深川三代目」

先日読んだ『昭和マンガ家伝説』で、平岡正明が激賞していたのがこれ。近所の古本屋でたまたま売っていたので、買ってみた。 たしかにこれは、いい作品である。深川にある立花工務店の孫娘・静は、子どものころから祖父の仕事現場に入り浸り、将来は大工にな…

平岡正明『昭和マンガ家伝説』

平岡正明が亡くなった。私がこの名前を知ったのは、一九七二年の『あらゆる犯罪は革命的である』によってだが、犯罪と反体制を無関係な、それどころか対極のものと考える潔癖左翼の発想から解放されるのに、この本のタイトルは(ほとんどタイトルと目次だけし…

さいとうたかを『ゴルゴ13 真のベルリン市民』

このマンガ、以前は全巻持っていたのだが、本棚が狭くなったので処分し、それからあまり読んでいない。何となくタイトルにひかれて、久しぶりに買ってみた。一五二巻目とのことである。一〇〇巻を突破したのは、つい最近のような気がしていたのだが。 表題作…

こうの史代『夕凪の街 桜の国』

2004年刊の文庫化。紙屋研究所の紙屋高雪さんが絶賛していたので、手に取ってみた。広島の被爆少女と、その家族たちの、美しくも哀しい物語である。 原爆投下の10年後の広島の川のほとり、「お前の住む世界はそっちではない」という声におびえる少女が、はじ…