橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

リヒテル EMI録音全集

クラシック音楽を聴き始めた中高生の頃、リヒテルのレコードは高嶺の花だった。初心者だから、聴いたことのない名曲のレコードをひととおり集めるのが優先だ。だから、廉価盤の中で、できるだけいい演奏を選んで買うというのが基本になる。当時、いわゆる名演奏家の演奏で廉価盤が出始めていたのは、指揮者ではクリュイタンスやアンチェルフリッチャイなど、ピアニストではクラウス、ハイドシェックヘブラーあたりだっただろうか。絶対に廉価盤にならない演奏家というのがあって、指揮者ではフルトヴェングラー、そしてピアニストではホロヴィッツリヒテルが代表格だった。
この状態は、CD時代になっても続く。それぞれの演奏家の代表作といわれるようなものを、ひととおり買いそろえるようになったのは、就職してからのことだ。しかし、代表作とまでいえない演奏に3000円前後も出す気はしなかったし、すでに廃盤になっていたことも多かった。聴きたいと思いつつ、いつのまにか忘却の彼方へと去り、これまで聴かずにいた演奏も多かった。
最近、広く出回るようになった、この14枚組。EMIへのすべての録音が網羅されている。シューベルトの「さすらい人」、カラヤンオイストラフロストロポーヴィチと組んだベートーベンの三重協奏曲、グリーグシューマンの協奏曲など、定番演奏はもちろんのこと、カガンと組んだベートーベンやモーツァルトソナタボロディンSQとのシューベルト「ます」、ヘンデル作品を収めた2枚、ブラームスモーツァルトドヴォルザークバルトークプロコフィエフ、ベルクの協奏曲など。古典から現代まで、輝くようなラインナップである。Amazonの定価は1万円ほどだが、マーケットプレイスへ行けば新品が5000円台で買える。ショップによっては、さらに安い場合もある。

Icon: Sviatoslav Richter

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