橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

坂崎重盛『東京読書』



 『環境緑化新聞』という業界紙に連載されている東京本案内をまとめたもので、『東京本遊覧記』の続編。「少々造園的心情による」という副題がついているが、著者は、かつて造園を学び、公務員として造園にかかわったことがあるとのこと。扱われる本は文学を中心に、自然史から都市計画、各種のルポルタージュまで幅広い。東京関係の本は多少は知っているつもりだが、それでも知らない本の方が多い。

 いろいろ教えられて、まだまだ勉強しなければというところだが、それだけではない。たとえば昔の都心について書きながら「夜店や露店を復活できぬものか」と提案する。あるいは、松原岩五郎の『最暗黒の東京』を取り上げ、かつての東京人のほとんどが貧民だとしたうえで「心強いことではないか」と付け加える。東京に対するこういうメンタリティに、とても親近感を覚えるのである。この著者には、『東京煮込み横丁評判記』という著書もある。メンタリティが近いのもうなずける。


東京読書―少々造園的心情による

東京読書―少々造園的心情による