川本三郎『私の東京町歩き』
必要があって、再読。最近「居酒屋考現学」などというものをやっているが、これはその着想を得るきっかけの一つになった本である。
著者は東向島から鐘ヶ淵あたりを散策し、縄暖簾のやきとり屋に入ってビールを注文する。すると、隣の客が話しかけてくる。「よっ、ビールか。景気がいいね。競馬でもうけたの」。「一瞬、何のことかわからなかった。すぐに、ここではビールは高級品なのだとわかった。彼が飲んでいるチューハイは一杯220円なのに、ビールは大瓶一本が 460円。倍はする。それで彼は私を『金持ち』と冷やかしたのである」。
こんな異文化体験も、居酒屋めぐりの醍醐味の一つである。
- 作者: 川本三郎,武田花
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1998/03
- メディア: 文庫
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