橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

たくきよしみつ『デジカメに1000万画素はいらない』



 デジカメの不毛な画素数競争が止まらない。コンパクトカメラのくせに1000万画素などという、無駄なスペックのカメラが横行している。

 デジカメの標準的なCCDは数ミリ角しかない。画素の大きさは、1.7マイクロメートル程度である。可視光の波長は0.6マイクロメートル前後だから、すでに限界に近い。縦横に並べられた直径17センチのバケツで、直径6センチのカラーインク滴を受けとることを考えてみればいい。かなりの確率で、水滴はバケツとバケツの境にあたり、跳ね返ったり2つのバケツに分かれて入ったりする。だから、画質が悪くなる。そもそも、コンパクトカメラのレンズに、光の波長という解像度限界に迫るほどの性能はないだろう。

 画素数を多くすることは、有害無益である。この点をずばり指摘したタイトルは、秀逸だ。OEMの現実についての裏話もおもしろい。

 ただし、本書の内容の大部分は、現在のデジカメに対する批判ではなく、マニュアルに載っていない撮影テクニックの解説である。フイルムカメラを長年使ってきた人なら、類推でいろいろなテクニックをすでに使っているはずだから、本書の内容の多くは、目新しいものではない。しかし、それでも目からウロコの記述がいくつかある。手ぶれ防止にネックストラップを使うというのなど、まさにそれ。ホワイトバランスを暖色系にして、食べ物を美味しそうに撮るとは、いままで思いつかなかった。Irfan Viewというフリーソフトも教えられた。

 カメラや写真のマニアではないけれど、デジカメで写真を撮ることが多いという人は、必読。もっとも、類書は少なくないが。


デジカメに1000万画素はいらない (講談社現代新書)

デジカメに1000万画素はいらない (講談社現代新書)