橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

樋口尚文『ロマンポルノと実録やくざ映画』

最近、昔のB級映画が静かなブーム、なのだろうか。多くはビデオソフト化されていないのだが、衛星放送やケーブルテレビが普及して、比較的かんたんに見ることかできるようになったことから、ガイドブック的なものも求められるようになっているのかもしれない。
本書は日活ロマンポルノとやくざ映画を中心に、歌謡映画や青春映画、アイドル映画にミステリ映画と、幅広いジャンルから、いわゆる「名作」のカテゴリーには入らないものばかり100本ほどの作品を紹介している。ビデオ化されて入手できるのは、おそらく1割程度ではないかと思われるが、日本映画を放送している衛星チャンネル、たとえば日本映画専門チャンネル(東映系)、衛星劇場(松竹系)、チャンネルNECO(日活系)などをこまめにチェックしていれば、けっこう放送されている。これらで放送される作品には、はっきりいって駄作も多いから、こういうガイドブックにはけっこう需要があるはず。その意味では好企画で、これからも需要は増えると思う。
よく言われることだが、70年代は日本映画が斜陽化した時代で、若い映画人の多くは、テレビでは放送できないポルノ作品やバイオレンス作品を低予算でつくるところから、キャリアをスタートさせた。セックスと暴力の見せ場さえあれば、会社は映画を作らせてくれたから、それ以外の点では思い切った実験も出来た。団塊世代を中心とする若い男たちがその顧客だった。ここから、今日の日本映画を担う人材が育ってきたのである。その原点となる作品群について、多くのことを知ることができる本。1970年代の熱い記録にもなっている。