橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

ザルツブルク音楽祭 ウィーン・フィル・コンサート4

classingkenji+books2010-09-08

 最初に聞いたのは、22日午前11時からのコンサートで、指揮はクリストフ・エッシェンバッハ。この人を実物で見たのは、はじめてだ。風貌といい、指揮ぶりといい、また詰め襟の服装といい、井上道義そっくりである。曲は、シューマンの珍しい曲3曲、ウォルフガング・リームの最近の作品を挟み、最後がシューマン交響曲第2番。
前半のシューマンは、「序曲とアレグロ・アパッショナート」「ピアノとオーケストラのための序曲とアレグロ」という、ピアノと管弦楽のための曲2曲の間に、最晩年のピアノ独奏曲であるガイスター・バリエーションを入れるという凝った構成。エッシェンバッハの意図としては、この3曲をシューマンの「もう一つのピアノ協奏曲」として演奏しようとしたのだろう。その意図はよくわかるし、この意図からすれば曲順もこうなると思わせたが、演奏は未消化のまま終わった感じである。シューマンの曲の複雑な構成と管弦楽法が十分整理しきれおらず、オーケストラのメンバーも何を求められているのかよくわからない様子で、演奏はしばしば散漫になる。ピアノのツィモン・バルトは、緩徐部で好演していたが、やはり構成感に欠ける。この2人はNDR北ドイツ放送交響楽団とともに、この3曲を同じ曲順で録音しているらしい。今度、聴いてみよう。
後半の冒頭、リームの「エルンスター・ゲザング」は、打って変わって作品が手の内に入っているところを見せた。はじめて聞くこの曲は、通常は第1バイオリンの入る位置にクラリネットが4人入るという変わった編成で、主席がコンサートマスター役を務めていたようだ。リームにしては、やや旋律的なところもあり、音響の魅力とともに、なかなかいい曲である。
さてメインの交響曲。第1楽章は、まだ前半の混乱を引きずったようなところもあったが、徐々に乗ってくる。ただ、金管があまり生かされていないことから、演奏は常に弦楽中心で進み、音響がやや単調である。テンポ設定にも必然性が感じられず、リズム感にも欠ける部分がある。しかし、そこはウィーン・フィル。弦楽器の魅力だけでも指揮の欠点を補って余りある。エッシェンバッハシューマン交響曲全集を録音しているが、やや散漫な演奏だった。今回も正直なところ期待半分といったところだったが、全体としては十分楽しめた。