橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

ザルツブルク音楽祭 グスタフ・マーラー・ユーゲントオーケストラ コンサート

classingkenji+books2010-09-14

26日の夜は、GMJOのコンサートを聴きに行く。指揮は、ベルベルト・ブロムシュテット。このオーケストラは、16歳から26歳のヨーロッパ市民をメンバーとするユース・オーケストラ。未来のヨーロッパ楽団の担い手たちを集めた卓越したオーケストラで、来日公演したこともある。見たところ、弦楽器を中心に、女性の比率がたいへん高い。
1曲目は、ブラームスのバイオリン協奏曲。ソリストヒラリー・ハーンは技巧的には申し分なく、完璧である意味冷たい演奏を基本に、ときおりさらりとだがルバートを入れてみせる。音は鋭く美しいが、旋律の歌わせ方を含めて、際立った個性がない。しかし今回の曲は、ブラームスの中でも特に古典派的性格の強い曲だから、問題はない。世代的に近いだけに、ときおりオーケストラ団員たちを見回して微笑むなど、心が通うあう様子もみせてくれた。アンコールのバッハ(パルティータから1曲)は、素晴らしかった。しかしこの先少なくとも30年は続くと思われる演奏活動を考えると、どこかで脱皮も必要だろう。休憩時間にはハーンのサイン会があり、私もプログラムにサインをもらってきた。
2曲目は、ヒンデミットの「画家マチス」。圧倒的な音量、うねるような弦楽器、全身で歌い上げる木管、鋭い金管など、このオーケストラの力量が十二分に発揮されていた。若い団員たちの情熱をまとめ上げたブロムシュテットの指揮も、見事である。このオーケストラが、ユース・オーケストラでありながら世界の一流オーケストラの一角に入りうることを証明した。
アンコールは、わざわざメンバーを増やして、「ウェーバーの主題による交響的変容」から終曲のマーチ。これまた高揚した文句なしの力演。「画家マチス」とセットで、ぜひレコーディングしてほしいものである。