橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

川本三郎『時には漫画の話を』

久しぶりに、読書&音盤ブログを再開。といっても続くかどうか保証の限りではない。
川本三郎は漫画にも詳しいが、おそらくこれまで、漫画だけを扱った単著はなかったはず。これが初めての漫画評論集ということになる。さまざまな雑誌に書いた文章を集めたものだが、いちばん古いものになると八〇年代の前半だ。今の川本の平易な文体とはかなり違っていて、たとえば「AKIRA」を論じた長文の評論(初出は八四年)など、かなり抽象的で生硬なスタイルである。
やはり東京を舞台としたいくつかの漫画を論じたもの、そしてつげ義春と房総を扱ったいくつかの文章がいい。たとえば小坂俊史の『中央モノローグ線』を題材に中央線沿線の街々を論じ、大友克洋の『ブギ・ウギ・ワルツ』(探してみたが、Amazonにすら登録されていない)を取り上げて新宿の第三次産業労働者を論じる。そして上村一夫の『関東平野』から論じるのは、東京と千葉の関係について。それ以外では、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』の分析が鮮やか。久しぶりに、漫画が読みたくなった。

時には漫画の話を

時には漫画の話を