橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

『私だけの東京散歩 山の手・郊外篇』

こちらは、続編。登場するのは、安部譲二高橋洋子渡辺えり子戸川純小中陽太郎如月小春嵐山光三郎など。葉山や熱海、鎌倉などの郊外もしくは別荘地にはあまり興味がないので、その分、読み飛ばす部分が多かったが、いい企画であることは間違いない。鎌倉には興味がないと書いたが、高橋洋子が面白いことを書いている。「鎌倉は、昔の東京を彷彿とさせてくれる町」だというのである。もっとも、俗化していない一部だろうけれど。
さらに面白かったのは、新宿・戸山を歩いた戸川純。新宿区新宿に生まれ、大久保で育った彼女は、戸山小、戸山中に通う。そこには、学校の反対側の閑静な住宅地や官舎に住む子どもたちも通ってくる。"こっち"の子たちと"向こう"の子たちという、異質な子どもたちが一つの学校に通っていた、と。写真が印象的だったのは、鷺沢萌が歩いた羽田。荒木のレンズは、下町・漁師町としての羽田を、鋭く捉えている。私も今度、歩いてみたい。