橋本健二の読書&音楽日記

日々の読書と音楽鑑賞の記録です。

川本三郎『ちょっとそこまで』

原著は1985年。『都市の感受性』『雑踏の社会学』などに続く、著者の都市論・紀行文としては初期に属するもの。

中野、阿佐ヶ谷、高円寺、小岩、亀有など、かつての郊外都市の良さを「どこにでもある匿名性」と喝破し、大きな盛り場に「群衆の中の孤独」があるというのはウソだ、と論じる「東京の『隠れ里』」は、『日本の名随筆』にも収録された佳品。

「『ガード下』の町、有楽町」によると、著者は有楽町の通称「焼き鳥横丁」が好きなのだという。「『ガード下』には差というものがない。ここに入ると中流下流も、男も女も、老いも若きも、みんな同じ『ガード下の客』になる」の一節に、私は深く共感する。

現在は、品切れのようである。軽量級のエッセイなので、図書館でどうぞ。


ちょっとそこまで (講談社文庫)

ちょっとそこまで (講談社文庫)